トランプ政権誕生 日本の自動車産業に「追い風」と「懸念」

1月20日にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。直近では、トヨタのメキシコ工場での生産を“口撃”するなど、日本の自動車業界にもトランプ政権の影響は少なからず出てきそうな気配だ。

しかし、トランプ新政権によって、日本の自動車業界に「追い風」となることもあるというのは、元日刊自動車新聞社社長の佃良夫氏だ。

「追い風」と「懸念材料」、2つの影響とは?

文:佃義夫
ベストカー2017年1月26日号


トランプ氏の景気政策は日本車メーカーに恩恵をもたらす

「アメリカファースト・偉大な米国の復活」を前面に掲げて当選し、2017年1月20日にオバマ政権の後を受けてトランプ政権がスタートする。

それでは、米トランプ政権の誕生で自動車産業、特に日本車は2017年どうなるのか、ということだが、ひと言で言うと、日本の自動車産業にとってトランプ政権は「追い風と懸念材料」に二分される。

1月20日に大統領就任演説を行うトランプ氏。その過激発言は“パフォーマンス”の側面もあるが、実際日本の自動車メーカーへの影響は少なからず出るだろう

追い風とは、世界第2位の米市場が1700万~1800万台規模の高水準でピークアウトの気配を示すなかで、公共投資拡大や雇用政策重視などトランプ政権の米国内景気政策によって刺激されそうなこと。

北米市場はシェールガスなど原油安の安定供給もあり、市場のなかでも特に大型車(SUV、ピックアップトラック)需要が旺盛になっている。

日本車にとって、米市場はなんと言っても名実ともに「ドル箱市場」なのである。トヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダといずれもグローバル戦略における北米市場依存は販売台数と収益性ともに非常に高いものがある。例えばトヨタはグローバル連結利益で北米事業は4割を稼ぐ重要市場だ。

米国市場は、日本車各社の収益源ということでかつての日米自動車摩擦を乗り越えて現地生産(部品サプライヤーも含め)化を定着させ、米市場全体の4割が日本車販売となっている。

このため、トランプ氏の言うアメリカの雇用重視に対して、日本車は大きく寄与しているのだ。

加えて米国向け大型車シフトで米現地工場での増産を進めている。特にスバルは米市場での「タマ不足」に現地生産能力を倍増させて対応していくほどの売れゆきを示している。

その意味では、トランプ政権移行後やや不透明ではあるが、円安が続けば日本からの米輸出も有利となる。

トヨタが2017年のグループ(ダイハツ、日野含む)世界生産計画を発表したが、1036万台と3年ぶりの過去最高となるものだ。これは米国での増産がひとつのベースでもある。

メキシコ進出の日本メーカーは北米戦略見直しの必要も

いっぽう、トランプ政権で懸念されるのが保護主義によるNAFTA(北米自由貿易協定)の行方だ。

NAFTAとは米国、カナダ、メキシコが相互に市場を開放した自由貿易圏の地域協定のこと。現在、3カ国間の関税が完全に撤廃されている。

日本車はこれを活用してメキシコ生産基地化を図っており日産、マツダ、ホンダに続きトヨタもメキシコ工場の起工式を行ったばかりだ。

トランプ氏は、選挙中からNAFTAに否定的で、

「米国の雇用が奪われた。メキシコとの国境に壁を作る」

と厳しい発言をしている。

トランプ政権がNAFTA見直しに踏み込めば、メキシコ進出の日本車各社は北米戦略の大幅修正を迫られるという懸念材料になる。

また、自動車産業にとっても大きなテーマとなっている電動化と自動運転について、この分野で先行する米シリコンバレー企業群との連携に実業家出身のトランプ政権が後押しとなるか、注目される。

写真は、マツダ・メキシコ工場起工式の様子。トヨタ、マツダを始め日本の自動車メーカーの多くがメキシコに工場を持つが、先行きは不透明だ。

 

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